幸治は聴診器を片手に、森良子の病室に入った。
「どう、体調は?」
そう幸治が良子に尋ねるが、良子は特に返事をしない。
「少し診察させて。」
「なんで?さっき終わったよ!」
幸治にも冷たい口調で言い放つ。
「君の担当は俺だ。俺が診察するのは当然だ。」
少しきつい口調で幸治が返すと、良子は渋々布団をめくった。
しかし、自分からはパジャマを開けないので、幸治は素早く上からボタンを外していく。
良子は真剣な眼差しの幸治の顔を見ないようにと、目を反らしていた。
静かな時間が流れる。
「ところで、今日はどうして内科の待合室なんかにいたんだ?」
聴診器を良子の胸に当てながら、幸治が尋ねる。
一瞬良子は驚いた表情をするが、すぐに元の表情に戻った。
「落ち着いてるフリしてても、体は正直だぞ。」
幸治はかなの言う女子高生が良子で間違いないと判断したのか、ナースコールを押して、採血セットをもってくるように指示した。
良子は幸治が診察を終えると、急いで胸のボタンを外して、布団を勢いよくかぶった。
「ジュースを飲んじゃいけないことくらい知ってるだろ?
この入院生活で食事にも気をつけてきたのに、全て無駄になるんだぞ。」
普段患者に厳しく言わない幸治だが、叱る時は厳しい口調になる。
「・・・・・・・。」
何も返事をしない良子を見て、ため息をもらす。
「少しでも体に負担のあるものを摂れば、命取りになるんだぞ。」
「そんなことわかってる!!!!!もうそういうの、どうでもいいから!!」
そう言うと、興奮しているのか、良子が呼吸を荒くしていることがわかった。



