「なんか良いことでもあったのか?」
「ヒィッ!!!」
振り返ると石川先生がベッド沿の椅子に腰掛けていた。
「な、なんでも、ありません!」
はぁはぁはぁ。驚いた…。っていうか、心臓に悪過ぎでしょ。いつの間に…。
完全に油断してた…。
「佐藤先生から聞いた。
検査が一通り終わったら、手術方針は話すから。」
表情一つ変えないで淡々と話す石川先生。
何を考えているのだろうか、この顔で小児科の子供達には意外と人気なんだから不思議…。
「分からんことあったら聞けよ。」
「はい…。」
何か他に言いたいのか、なかなか立とうとしない。
こうやって面と向かって話したのは、当直の夜の診察くらい…。
ここからどういう話をしたらいいのか。
「…悪かったな。」
「え!?」
「お前の体調のことは、聞いてはいたものの、詳しく知らないでコキ使って。
ここに来る前に、前回の手術内容は聞いていたんだが、ここまでの症状になっているとは知らず…。
苦しかったら言うだろうとしか思ってなかった。」
「い、いえ…。
そもそも私が何も言わなかったのがいけなかったので…。」
「まぁ、そうだな。」
あんら…。やっぱりそうだよね。
「これからっていう時に、どうしても持病に邪魔されたくなくて…。
1分、1秒でも新しいことを覚えたくて…。」
私がいけなかったんだ…。いろんなことに欲張ったから。
「まぁ、治ったら、また厳しくしてやるからな。」
ん?治ったら…?
「言ってなかったな。
アメリカでの勤務は終えて、これからこの病院で働くことになったから。」
「えっ!?」
ということは、石川先生が引き続き指導員…?
「そういう事。」
私の表情から汲み取ったのか、石川先生が答えた。
またあの忙しい毎日が、いつか訪れるのかぁ。
「だから、早く良くなるように、俺たちが全力を尽くすから。
お前は何の心配もするなっ。
とにかく、よく寝てよく食べて、おとなしくしてろ。」
そう言うなり、すぐに立ち上がり部屋を出て行ってしまった。
石川先生って、何を考えているのか分からなかったけど、今話してなんだか分かった気もする…。
幸治さんにしても、進藤先生にしても、石川先生にしても…。
皆、ただ一つ共通して、
人の命を救うのに一生懸命なんだなぁ。
私もああいう医者になりたい…。



