夜になり、幸治さんとお父さんが一緒に帰ってきた。
「ただいま。」
「あれ?あなた、今日はやごな病院だったの?」
とお母さんがキッチンから尋ねる。
「あぁ、やごな病院の心臓外科で少し遊んできた。」
え?遊んできた?
「よく言うよ。
朝病院に来たと思ったら、そのままオペに入ってるんだから。」
あきれ顔で幸治さんが言う。
「え?手術?」
私には信じられない。お父さんって、アメリカの医者だよね?
「はは、かなちゃんが驚いてるぞ。
大丈夫だよ、かなちゃん。
お父さんはね、日本での医師免許もあるから、こういうことはよくあるんだ。
ブラックな世界で働いてる訳ではないからね。
かなちゃんの手術ができたのも、同じ理由だよ。」
あ、そういうことなんだね。
それにしてもすごい、お父さん!!!
ニコニコした顔のお父さんを、憧れの眼差しで見ていると、突然顔付きが変わり、
「かなちゃん、術後の心音を聞かせてもらってもいいかな。」
と思ってもないことを言い出した。
つい条件反射で、座っていたソファから立ち上がり、後ずさりしていた。
「かな、逃げても無駄だぞ。」
同じように医者の顔になる幸治さん。
「い、いや、そうじゃなくて。
勝手に体が・・・・・・。」
苦しい言い訳・・・・・・。
半分は条件反射で、半分は私の意思。
さらに幸治さんに睨まれる。
「ごめんなさい・・・・・・。」
怖くて素直に謝った。
「ほんとに、かなちゃんは嫌いなんだな。診察が。」
いや、好きな人はいないでしょう。
こうして私は、お父さんの診察を受けることになった。



