「今日は疲れただろ?」
吸入器の前に座る私に、幸治さんが声をかける。
「はい・・・・・・、ずっと緊張しっぱなしで。」
そう答えると、幸治さんは吸入器の使い方を丁寧に教え始めた。
「これからは自分で仕事終わりに、ここに来て吸入しなさい。
自分の体のことは、自分が一番よく知ってるだろ?」
私の隣の席に腰を下ろして幸治さんが言う。
「・・・・・・はい。あ、でも費用のことはどうしたら。」
勝手に機械をいじっていいのかな。
これも薬が出るわけだし。
「あぁ、大丈夫だ。職員はこの病院での治療費はタダになるように手当てがあるんだ。
だけど、一ヶ月単位でどのくらいこの機械を使ったかといのは、翌日でいいから、パソコンで入力する必要がある。
またそれは明日にでも教えるから。」
そうなんだ。今まではそういうことも、全て進藤先生や幸治さんかやってくれてたんだね。
「じゃあ、一回だけでいいから。」
そういい、私に機械をつけるように促し、私は渋々スイッチを入れた。
ガチャッ
ゴーーーー、
ゴーーーーーーーーーーーー!!!
次第に大きくなる音と共に、マスクから薬の入った湯気が吹き出る。
それを口に当てる。
「ゴホッ!ゴホゴホゴホっ!!!
ハァハァハァ・・・・・・。」
呼吸を整え、いざ。
「ゴボゴボゴホゴボゴボゴホ・・・・・・。」
うぅ、毎度ながら慣れないし、吐きそうな臭い。
余計に疲れがどっとやってきて、睡魔も襲う。
すると、隣に座っていた幸治さんが、私の後ろにやってきて。
「後すこしだ、頑張れ」
私の背中から抱き着くように私を支えて、ドキッと胸が高まる。
と思ったら、私の持っていたマスクをさらに私の口に隙間なく押し当てる。
「ゲボッ!!ゲボゲボゲボゲボ!!!・・・・・・。」
意識が遠退きそう。
吸う瞬間に咳込むから、うまく呼吸ができない。
苦しくて涙が目に浮かぶ。
ついさっきの幸治さんの行動にドキッとした私が馬鹿みたい・・・・・・。
最初から幸治さんは医者だった。
家でも医者の顔になるけど、病院では夫の顔ではないことがよくわかった。
もはやまともに息ができてないから、これが本当に意味ある行動なのか分からないけど。
ピーーーー!
と、ようやく終了音がなる。
「ハァハァハァハァハァハァッ!」
苦しすぎてなかなか息をうまく吸えず、呼吸はいまだに荒い。
吸入が終わると立ち上がる幸治さん。
すぐに帰ろうとする幸治さんを追い掛けようと、席を立った瞬間っ!



