戦いは大殿達の軍と合流し包囲していた。此度は大殿が連れてきた軍と秀吉殿の軍、それに明智殿も軍を出していた。
「大殿!僧が交渉をしに参りました!」
「ふん!怖じけづいたな。しかしもう遅い。追い返せ。」
「はっ!」
僧は金を払い織田家に見逃してもらおうとした。
しかし放っておけば再び軍事的に使われることは明白。
それに既に大殿の怒りをひどく買っているのだ。見逃して貰えるわけがない。
「大殿、夜にやってしまっては討ち洩らしがあるやもしれませぬ。しかし早朝に行えば一人とて討ち漏らす事はありますまい。」
秀吉殿が進言すると大殿はそれに賛同した。考え方が鬼ようだと思いつつも誰も二人にそんなことは言えない。
夜のうちに三万もの兵で包囲し明朝を迎えた。
「一人とて討ち漏らすな。」
大殿は怖い顔をしながらそう言っていた。
まず坂本、堅田周辺を焼き払った。それを合図を方々から法螺貝が鳴り比叡山に討ち入った。
仏も社も僧坊達も全て雲霞の如く焼き払うその様はまさに地獄絵図のよう。
山下にいたもの達は老若男女が右往左往しながら逃げ回り、坂本に住んでいた僧達は日吉大社の奥宮のある八王子山に立て籠ったがそれらも焼き払われた。
二千以上もの僧や女子供が殺された。
「嫌なもんじゃな…。」
秀吉殿は何に対して言ったのかは定かではないが、そもそも僧達が女子を連れ込んで遊んでいたりしなければ、女子供は殺されることはなかった。
僧達が軍事的に暗躍しなければ、そもそもは攻められる事もなかった。
秀吉殿は仏だなんだとあまり信仰する方ではないが、彼らが仏に背くようなことしかしていなかった事に腹をたてていたのだろう。
大殿は戦いのあとやはりと言うべきか、悪評が広まり“第六天魔王”とまで言われるようになった。

