三成の事を聞こうと思っていたのに、すぐに大殿から挙兵の指示が来た。
それによって秀吉殿は物凄く苛々していた。
「殿!」
「あ?」
「す、すみませぬ…。」
正則が何かを報告しに来たのだろう。しかし苛々している秀吉殿は殺気を振り撒いていた。
正則はいかつい男であるのに、秀吉殿の殺気に思わず身を縮み、萎縮した。
秀吉殿は少し大殿に似ている。怒ると大殿くらい怖いのだ。
しかしやってしまったと思ったのだろう。秀吉殿は殺気を瞬時にしまい、慌てた様子で詫びを入れる。
「あっす、すまん!正則は悪くない!」
「い、いえ!殿が考え事をしている最中に声をかけてしまったそれがしが悪いのですっ!」
「違うし大丈夫じゃから!いやな、此度の戦の比叡山の連中に腹が立っていただけじゃから。本当に正則は悪くない。」
眉を下げ、懸命に謝る秀吉殿と頭を下げ申し訳無さそうにする正則を見ていたら何だか可笑しくて笑えてくる。
くすくすと笑っていたら二人して変なものでも見るかのように振り返ってきた。
「ふふっすみませぬ…。なんだかお互いに懸命に謝ってるものですから。面白くて…!」
「たくっ半兵衛は趣味が悪い。懸命に謝る我らをくすくすと笑うのだから。なぁ正則?」
「本当ですよ。竹中殿は酷いお方ですなぁ。」
そう言って二人でそれがしを非難してくる。
「あっなんでそれがしが悪者なるんですか!」
「あの男、悪びれる様子もないぞ。」
「ははっ困ったものですね。」
三人で大きく笑い、苛立っていた秀吉殿もようやく和んだ。

