樫の木の恋(上)



次の日の夜には横山城へとついていた。先についていた小姓達が既に用意していてくれ、そのまま城で住めるようになっていた。

秀吉殿の配下には、自分と蜂須賀正勝殿、堀尾吉晴がいたのだが、それに加え小姓から武士へと召し上げた加藤清正、福島正則がいた。

秀吉殿は翌日に配下のそれぞれと面談を行い、本当に女である自分で下でいいのかと聞いていた。
勿論嫌と言ったところで、怒りもしないし今と同じ待遇で大殿に仕えられるよう計らってくれるとまで言っていた。

岐阜城では戦いが終わってすぐに出ることになってしまい、ゆっくりと聞ける機会がなかったからと横山城に来てからやったのだ。

「それにしても誰も離れていかんとは少し予想外じゃった。」

そうこぼす秀吉殿は嬉しそうにしている。
今日は面談もした上に、書簡を書いたり、城の者への命令を出したりと忙しくしていた。
今でも、自分は既に今日の仕事は終わったが、秀吉殿はまだ書き物があるようで机の前で蝋燭を灯し話ながら書いている。

「秀吉殿は武将として優秀ですから。」

「持ち上げても何も出んからな。」

「残念です。」

ふっと笑いながら、書き物が終わったのか筆を置きこちらへと向く。

「のぉ、半兵衛。」