しかし秀吉殿は美人だ。もしかしたら拷問といって無理矢理犯されてしまった可能性が高い。
そういう理性のない拷問をする飢えた輩は多い。
考えれば考えるほど頭の痛くなってくる状況に腹が立ってくる。
「それを徳川殿がこっそりとわしに秀吉が捕らえられてる情報を流し、忍びに頼んで秀吉を盗んできて貰ったのじゃ。」
「盗む?」
「ああ。盗ませた。しかしその時には秀吉は重体でな。しばらく動けんほどだった。」
「そんなに…。」
秀吉殿が大殿に大きな恩を感じているのは、この事からだったのか。大殿は拷問から助けてくれたうえに、望んでいた武士に取り上げてもくれた。
それならあそこまで恩義と忠義を大殿に向けるのにも納得出来る。
あのお方はまだ話してくれてない事が多いのだなと思い知った。
「半兵衛。わしが知っていることは話したからな。」
「…ありがとうございます。」
「秀吉は色々と言わんことも多い。溜め込みやすい奴じゃからな。半兵衛、秀吉を頼む。」
「…!」
大殿は小さく頭を下げた。一国の大名が、ましてや大殿が頭を下げるところなど初めて見た。
「大殿…!」
「わしはもう近くにはいてやれん。秀吉にはもっと出世してもらわなければならんしな。だから、頼むな。」
大事な宝物を託すかのように大殿は頼む。
本当は手元に置いておきたいのだろう。
「…分かりました。」
話が終わり部屋から出る。障子を閉める時大殿がちらっと見えた。
寂しそうな顔は秀吉殿を思っていて、愛しているのだなと思い知らされた。

