「秀吉殿!大丈夫ですか!?」
思いっきり叩かれたのだろう。秀吉殿の頬は少し赤くなっていた。
まだ痛いのだろうかとか、冷やしたほうが良いだろうかと考えていると秀吉殿が面白そうに笑う。
「半兵衛!心配しすぎじゃ。こんなもん痛くも痒くも無いわ。」
「ですが」
「お主は少し過保護なところがある。そんな心配せんでもわしは平気じゃ。」
そうにこやかに笑う秀吉殿に何も言えず、少し不満気に秀吉殿を見ていると、秀吉殿に片想いしていた女中が今度は笑いだした。
「あははっ。半兵衛様は本当に秀吉様がお好きなのですね…。」
「あ、まぁ。」
「それにしても秀吉様は格好いい。」
女中は秀吉殿を好いている目で見据え、可愛らしい笑顔で笑った。
「わしは女じゃぞ?」
「それでも…私は秀吉殿という人間に惚れたのです。女と分かった所でそう簡単に切り替えられませぬ。」
「そ、そんなこと言われても…。わ、わしは女は好きになれんぞ…?」
そういうと女中は大きく可笑しそうに笑っていた。秀吉殿も己が可笑しな事を申した事に気づき、つられて笑っていた。
「あははっそ、そういうことではなくて、これからは同じ女として友に…なれないかなと言いたいのです。さすがに図々しいのは分かっているのですが…。」
そう言われた秀吉殿は驚いた顔をし、しばらく固まっていた。
「お、女子の友…か。なんだか…恥ずかしいのぉ。」
照れた顔をし、頭をかきながらそれでも片手を女中にすっと差し出す。
「その…友になってくれたら嬉しい…。」
「こちらこそよろしくお願い致します。」
両手で秀吉殿の手を嬉しそうに握る女中に、秀吉殿は照れながらも両手で握り返していた。

