宴会場へは戻らないという秀吉殿について、家へと帰ってきた。秀吉殿は無言で居間へとつくと、自分に座るよう促す。
しかしそれには応じず秀吉殿を後ろから抱き締めた。

「半兵衛…お主には…驚かされた。」

「秀吉殿が悪いのですよ?それがしのためとか言って遠ざけようとするから…。」

ゆっくりと秀吉殿は自分の腕を優しく掴む。少し冷たいその手は気持ちがいい。

「だが、本当にいいのか?私は生き死にも近い。女と明かしたことによって、女のくせにと思う輩もおるじゃろう。面倒じゃろうし、辛い思いをするやもしれん。」

「それでも…秀吉殿が良いのです。」

「…半兵衛は強情じゃのぉ。」

苦笑いしながらそれでも秀吉殿はどことなく嬉しそうで、それが嬉しくてついつい強く抱き締めてしまう。

「今日は一緒に朝までいたいです。」

「なっ…しょうがないのぉ…。」

諦めた秀吉殿をさっと抱き上げる。すると秀吉殿は一生懸命逃れようとしていた。

「は、半兵衛!やめんか!」

「嫌です。」

「嫌ってそんなっ!」

ばたばたと暴れる秀吉殿を自分の部屋へと連れていき、ゆっくりと布団へと降ろす。すると暴れていた先程とは一変して、恥ずかしそうに顔をそらす秀吉殿。
そんな秀吉殿があまりにも可愛らしくて、今度は座りながら抱き締めた。

「…そういえば秀吉殿。それがしは秀吉殿がそれがしの事をどう思っているか聞いておりませぬ。」

「そ、そんなの分かるじゃろ…。」

「言葉にして頂けなければ分かりませぬ。」

きっと顔を真っ赤にされているのだろうなと思い、抱き締めていた腕を緩め秀吉殿のおでこに自分のおでこをつける。
すると秀吉殿の顔は案の定真っ赤になっていて、可愛くて無性に口付けをしたくなったが我慢する。

「言って下さらないのですか…?」

「…っ!は、半兵衛…近い…。」

顔をそらそうとする秀吉殿の顔を手で押さえ、しっかりと目が合うようする。