「わしに願うくらいなら、今すぐ秀吉の元へでもいけばええじゃろう?お主は変なところで奥手じゃな。」
「大殿は構わないのですか…?」
「なんじゃ、今度はわしの心配か?忙しいやっちゃのぉ。」
そう言ってから大殿は少し寂しそうな顔をした。
「秀吉のやつ、最近わしと会ってる最中もお主のことばかり考えておってな。見てると辛いだけじゃ。」
大殿は本当に秀吉殿を愛している。一国の大名という立場と恩人という概念が、秀吉殿と大殿の邪魔をしている。それがなければ、秀吉殿は大殿を愛していたのだろうな。
そう思わせる程、大殿は綺麗だった。
「大殿…ありがとうございます。」
「はっ!何故礼を言われねばならんのじゃ。わしはもうあんなじゃじゃ馬娘の手綱を引っ張るのが面倒になったから半兵衛にやると言うておるだけじゃ。」
「それでも…ありがとうございます。」
深々と頭を下げる。頭をあげ、急いで秀吉殿のところへと向かおうと襖を開けると、大殿がにやっと笑いながら、少し悪そうに口を開いた。
「それにそろそろ秀吉のやつ、女だと周りに明かしても良い頃じゃろう。」
そういってから早く去れと手で払っていた。

