「どうした秀吉。」

信長は少し元気のない秀吉に首をかしげていた。

「いえ…別に。」

その返答に半兵衛の事が頭に沸いてでてくる。先日の飲みの席の後、秀吉は半兵衛との距離を置いていたのに、すぐに戻ってしまった。
かといって、二人で仕事をこなすと優秀な結果を残せる二人を引き離す事など出来ない。
織田家にとっても不利益だし、周りにも不自然に見えてしまう。
そう信長は考えていた。

「秀吉、半兵衛の事を考えておるのか?」

「えっい、いえ。そのような事は…あっ……」

信長は秀吉を後ろから抱き締め首元に顔を埋める。

「秀吉…。好きじゃ…。」

少しせつなげに呟くように言う信長に、秀吉は罪悪感で胸がいっぱいになっていた。
大殿にこんなことまで言わせてしまって。
半兵衛に心が動いているなど、口が裂けても言えなかった。

「それがしは……大殿のもの…です。」
そう言いながらも別の事ばかり考えてしまう。
徳川殿が今の関係では半兵衛を不安にさせていると言っていた。
半兵衛はやはり普通の女子と普通に結婚させてやるべきではないのか。生き死にに左右されない女子と。

そう秀吉は信長に抱かれながら考えていた。