そのあとサラシを巻き、包帯を巻き終えた木下殿に着物を着せる。
チラッと古傷を見るがやはり痛々しい限りで、いつか木下殿が話してくれるのを待つしかないのだなと感じていた。
「ありがとうな、半兵衛。」
「それがしのせいなのですから。」
「半兵衛のせいなどではないと言っておろう?」
そう言って少し笑う木下殿は、最近見られた冷たい顔は微塵も感じられなかった。
「…それに私も冷たくして悪かった。」
「それこそ木下殿のせいではないじゃないですか。」
木下殿は罰が悪そうに首を振る。
「本当のところ。大殿に半兵衛との仲を疑われてな。それが原因で大殿に見捨てられてしまっては生きていけない。遠ざけねばと思っていたのだ。」
生きていけない…。その言葉がどういう意味を持つのかは自分には分からない。だが、それが木下殿の全てなような気がしていた。
「しかし…半兵衛と距離を置いていた間、胸が苦しかったのじゃ。私はどうしてしまったんじゃろう。」
そう呟くように話す木下殿を傷に触らぬようゆっくりと抱き締める。抵抗するほどの力がもうないからなのか、それとも受け入れてくれてるのか、木下殿はそのまま抱かれていた。

