明智殿は快く向かい入れてくれた。
「それにしても二人で来るとは思わなかったな。」
そうにこやかに笑う明智殿。これから何の話をするか既に分かってるようだった。
端正な顔立ちは少し木下殿を思わせるが、明智殿はもっと男らしかった。
そして底知れぬ心の奥を感じる。
「秀吉の事は他言しない。このような美人を城から追い出すのは気が引けるからのぉ。それにそんなことをしたら大殿の怒りを買ってしまうしな。」
にやっとする明智殿はどこまで本気なのかは分からない。やはり明智殿は少し危ない匂いがする。
「そうだ、少し半兵衛席を外してくれぬか?」
明智殿からそう言われて思わず顔をしかめてしまう。
「何故です?」
「そう怖い顔をするな。お主の主に手をかけたりでもすると思うたか?余も嫌われておるのぉ。」
余裕な笑みを見せる明智殿に沸々と怒りが湧いてくる。しかし木下殿は冷静に自分をたしなめる。
「半兵衛。少し席を外せ。」
そう言われ仕方なく部屋を出て、隣の部屋で待っていた。思わず木下殿が心配で耳をそばだててしまう。
しかし小声で話しているのだろう案外聞こえなく落胆していた。

