「正勝はすまんのぉ。揉め手の火付けに参加させてしまうことになる。半兵衛は大殿からの命令じゃ大手門攻めに参加せい。」
「ははっ。」
何故…数日前に木下殿をお守りしたいから連れていって下されと言ったのに、揉め手に少人数で火付けなどという危険な事に自分は付いていけないのだろうか。
少し恨めしく大殿の事を思っていると木下殿が苦笑いしながらたしなめる。
「半兵衛…そのような顔をするな。」
「それがしは稲葉山城に住んでいた人間です。揉め手の場所も熟知しております。なのに何故、それがしは大手門なのでしょう?」
「揉め手の場所なら心配するな。先日こっそりと一人で稲葉山城の周辺で調査をしていたところ、堀尾吉晴という男に会ってな。稲葉山攻めの際道案内するかわりに武士としてめしあげると約束をしたのだ。」
得意気に大丈夫だと言わんばかりに木下殿が胸を張る。
「半兵衛殿は大殿に期待されておるのじゃろうよ。わしも頑張らんとな!あっはっはっ」
蜂須賀正勝殿が豪快に笑う。正勝殿は自分よりも先に木下殿に仕えていた者だ。墨俣一夜城の際に活躍したと聞いている。
やはり先に仕えていた正勝殿のほうがいいと言うのか。
そう卑屈になりながら木下殿と共に帰路についていた。

