あれから十日以上がたっていた。
西美濃三人衆の調略は上手く行っており、安藤守就殿、稲葉良通殿を懐柔し残すは氏家直元殿のみとなっていた。
やはり木下殿は人たらしというか、好かれやすいのだろうか。

その間木下殿は忙しくしており、大殿との逢瀬も無いようだった。とはいえ、自分と木下殿の関係も何も進展は無かった。
あの日抱き締めた事もほとんど無かったかのような対応をされていた。

「終わったー…。眠いのぉ…。」

一昨日から家を開けていた木下殿は氏家殿に会いに行っていた。無事調略が終わり氏家殿を城に届けてから真夜中に帰宅した。

布団から出て木下殿の様子を見に居間までくると、ここ最近調略に頭を悩ませていた分疲れたのだろう、居間で休んでいたところそのまま畳の上で寝てしまったようだった。

長い睫毛に陶器のような美しい肌。小さく色づきの良い唇はこの間の大殿との逢瀬を思い出させる。

自分のものになってくれるならどれだけ嬉しい事か。
そう想いを馳せながら木下殿の頭を撫でる。

「木下殿、こんな所で寝ていては風邪を引いてしまいますよ。」

「うーん……。もう…すこし…」

そう言いかけて寝てしまった。この間大殿に隙を見せるなと言われたばかりだというのにこのお方は。

さすがにこのままにしておくのも忍びないが、遠い木下殿の部屋まで連れていくのは大変なので、自分の部屋の布団まで抱き上げ連れていく。

布団に木下殿を寝かせ眺めていた。
思わず木下殿の唇に目がいってしまう。大殿と口付けしている姿が容易に想像できてしまう。

そのうち元々寝ていた自分は徐々に眠くなり座ったまま気づかないうちに意識がなくなっていた。