「半兵衛…顔が怖いぞ?もう私は平気じゃから。」

「すみませぬ…。ただどうしても腹が立って。」

そう言うと秀吉殿はため息をつき、爽やかに笑った。
秀吉殿がそうやって笑うときは隠そうとしているときでもある。

「半兵衛。ここまでにしよう。」

「え…?」

「これ以上話したくない。」

「それがしは何を聞いても秀吉殿を嫌いになったりなどしません。一人で辛い思いを抱え込まれる方が嫌なのです。」

「ははっ。半兵衛のその気持ちは嬉しいが、これ以上話してもそう思ってくれるとは思えん。汚らわしいと…思うだろうよ。」

そうやって気持ちを遠ざけようとする。

正直、本当に秀吉殿に腹が立った。この間喧嘩したときなど非にならないくらい腹が立っていた。

「そんなにそれがしは信用が無いのですか?」

「え…?」

「そんなにそれがしでは共に背負うに値しませんか?」

「そういう…訳ではないが…。」

「そんなにそれがしが信用出来ないのでしたら、もう別れましょう。信用されないのに、付き合うなど虚しいものはありませんから。」

そう言って勢いよく体を起こし、着るために着物を引き寄せる。