「で、織田家と対立した頃、氏真に惚れられてな。側室になれと迫られていた。」

今川家当主、今川義元の息子である氏真。義元が亡くなった後、今川家の当主となっていた。
普通に考えれば次期当主の立場であった氏真に側室になれと迫られたら受けるものだろう。

「…そもそも氏真は性格が嫌じゃった。ねちっこくてな。束縛をしたがるし。武士になりたいとずっと言っておるのに…。」

氏真が本当に嫌なのだろう。辛そうな顔をする秀吉殿の頭をふわりと撫でると秀吉殿は少し笑った。

「そしたら捕まえられ、拷問をされた。」

思わずひやっとする。拷問などよくある話だ。
拷問をするときは一生恨まれるのを覚悟でやる。だからか織田家は拷問は男、それも武士にしかしない。
武士は敵方に捕まればそうされることくらい覚悟で生きている。

だから側室を断られた、その程度のことで拷問をされた秀吉殿が可哀相に思える。
それと同時に氏真に怒りを覚える。

「縛り上げられ、拷問部屋に入れられっぱなしだった。」

ここからは大殿も知らない話。思わず息を飲む。

「背中を鞭で打たれたり、ゆっくりと刃物で切られたり、爪を剥がされたり。最初のうちはそういった拷問だった。そのうち体を犯されるようになった。」

壊れそうな秀吉殿をゆっくりと抱き寄せる。辛いことを思い出させてしまっていることに、少し罪悪感を感じていた。

「何故私の傷が背中だけだと思う?」

「え…?何故です?」

「ふふっ半兵衛には答えられんだろうな。要は前のほうに傷があると抱く時に萎えるからだそうだ。」

思わずカッとなる。頭に血が上ってくるのが分かった。
拷問を与えるだけ与えて、欲しい時に犯すなど…!