樫の木の恋(上)



「おい、誰かいるか!」

「はっ!」

大殿はいきなり小者を呼びつけ指示を出す。指示を出し終わるとこちらへと向き直った。

「半兵衛…挽回の機会を与えてやろう。」

「え…?」

「これから朝までに秀吉を抱け。部屋は用意させた。」

「お、大殿!何をいきなり!」

恥ずかしくて顔を上げられなかった秀吉殿が、さすがに今の発言には驚いたようで口を挟む。

「秀吉もそろそろ克服しろ!でないと、今度こそ本当にどこかの女子に取られるぞ?」

秀吉殿は何も言い返せず、うぐぅと黙ってしまった。

「それがしはそのようなこと…!」

「半兵衛も抱けぬというなら、今度はわしが秀吉を奪うぞ?それでも良いと申すか。」

「なっ…!」

大殿が秀吉殿を本気でとろうと思えば、いくらでもそのような事すぐに出来るだろう。
それだけは避けたい。

「決まりだな。二人を部屋へ連れていけ。抱いたと嘘でもついてみろ。秀吉は小谷城へは帰さんからな。」

大殿は悪意のこもった笑顔で楽しそうに笑っていた。
三成は諦めたといった感じで、くすくすと笑っている。



自分と秀吉殿は数人の小姓に連れられ、部屋へと入らされた。