浅井家を滅ぼすのか。それはもう既に決まっていた事ではある。先日虎御前山から横山城までの大きな要塞を作り、そこに攻めてきた朝倉、浅井家を迎撃しそのまま猛追し壊滅的な状況にしてある。

朝倉家に至っては前哨戦にて敗北したうえに、翌々日には大殿が攻め入り一乗谷城が焼き払われ、逃げ延びた朝倉義景は自害し朝倉家は滅亡していた。



浅井家め攻める命令が秀吉殿に下されることもある程度予想出来た。
そもそも浅井家の監視役として秀吉殿は横山城にいるようなものだった。

秀吉殿が悩んでいるのは、恐らく浅井長政の嫁のお市の方様をどうするか悩んでいるのだ。

「きっと小谷城を攻め落とせば、長政と共に自害してしまう。」

「お市の方様も武家の娘。それは覚悟しておられると思います。」

「しかし大殿の妹君じゃぞ?助けても良いんじゃないだろうか。」

「お市の方様がそれに従うとは思えません。」

「無理にでも連れ出すべき…か。後味の悪そうな戦じゃの。」

そうぼやく秀吉殿は大殿の悲しむ顔を想像しているのだろう。十三も離れている大殿の妹君。お市の方様の美しさは秀吉殿に負けるとも劣らず。
そんな妹君を大殿はひどく可愛がっていた。

戦は十日後に行う事になった。