あれからというもの足利義昭殿が本格的に織田家に牙を向いてきた。しかし反織田包囲網の一角であった武田家の当主、武田信玄公が死んだためにその勢いは弱体化していた。

これを気に大殿は足利家に攻めいり、滅ぼし義昭殿を追放した。織田家が後見人としてかかげてやった征夷大将軍の座だというのに、大殿が厳しいと文句をいい歯向かう義昭殿には仕方のない処置だった。



浅井家の磯野員昌の調略に秀吉殿はしばらく出向いていた。


姉川の戦いにて浅井家の中で大きな戦功を上げた磯野員昌は、城主として佐和山城にいた。

しかし姉川の戦いで分断された磯野員昌が内通者だと浅井家に噂を流したお陰で、磯野員昌が要求する物資の供給などを浅井家が断ったのだ。
それにより磯野員昌は怒り織田家に降りたという訳だ。

それを秀吉殿が考え、実行していた。
やはり鬼畜というか、やることが恐ろしい。

秀吉殿は今日帰ってくるはず。三成の事を聞くなら今日しかないと考えていた。

しかし

「半兵衛!少し話がある。」

秀吉殿が疲れた色を見せながらも引き締めた顔からは不味い事でも起こっているのではないかと思わせる。

「何かあったのですか?」

「いやな、大殿から書簡が来てな。浅井家を攻め落とせと命令が来た。」

「ついに…ですか。」

「ああ。うちからは小谷城は近いしな。」