敵機は撃墜しても減らず味方は減る一方だった。

「5機ですかね?」

殆どの機体は弾薬が尽き攻撃の手が無くなったところを敵に包囲された。

「死ぬときはベッドの上と決めていたがこんな旧式の棺桶とはな…」

シューマは死を覚悟する…。

しかし、突如敵部隊は撤退を始めた。

「なんだ?」

「少尉!後方の艦隊です!」

前方の異常を察知した地球圏統一国家精鋭宇宙艦隊、ムラサメ艦隊が救援に駆けつけたのだ。

流石に敵部隊は全長600メートルものある宇宙艦、ムラサメを旗艦とする5隻の護衛艦からなる艦隊の前に不利を悟り撤退したのだろう。

「こちら、ムラサメ艦隊司令官レイン・アンダーソンだ。残ったのはお前達だけか?」

「はい、調査団は壊滅…敵部隊の所属は不明ですがこちらに…」

シューマがそこまで言うとレインはそれを遮った。

「兎に角一度こちらに合流せよ。詳しくは艦内で聴く。」

シューマは一旦は戦闘が終わったことに安堵した。

「以上が経緯です。」

シューマはレインに報告した。

「にわかに信じがたいがまさか、初の地球外生命体が敵とは…。」

「同感です。」

レインはアゴヒゲを撫でながら思案した。

(本国に通信しても6日後に届く…その間我々は通常航法で戻るしかないか…。)

艦隊は行きはワープ航法来たがワープのエネルギーが尽きた間通常航法で地球に戻るしかない。

「兎に角だ、我々は一度地球に戻る他ない…。その間敵の攻撃を受ける可能性がある。お前は艦隊のAS部隊に配属する。」

「はっ!」

「君の経歴なら問題は無いだろう…期待しているぞ?シューマ…いや、フォン・A・シューマ王子…」

シューマはその名前を言われた途端露骨に嫌な顔をしてなにも言わずに退出した。