「ただいま」
静かにドアを開ける。返事はない。いつものことだ。
あたしはリビングへまわる。お母さんはソファに寝っ転がっていた。
「お母さん、ただいま」
「うるさいわねぇ。聞こえてるわよ!」
ただ、ただいまを言っただけなのに・・・。うちのお母さんは、いつもそうだ。あたしを邪魔者扱いする。今日もご飯は、作ってもらえない。はあ・・・。今日もカップラーメンかぁ。あたしは自分の部屋に移動した。
うちは、幼い頃、両親が離婚し、お母さんはそのときから変わってしまった。あたしに興味を示さなくなったし、若い男を部屋に連れ込むようになった。あたしはそれがすごく嫌だった。
カップラーメンにお湯を注ぎ、上からまな板を載せる。タイマーを四分にセットし、冷蔵庫からサイダーをとった。個人的には、柔らかめの麺が好きなので、四分にセットした。
やがて、四分が経ち、タイマーが鳴った。あたしは、お腹が空いていたので麺をすぐにすすった。
「あちっ」
舌の当たりを火傷した。でも、構わず食べた。ほんとにお腹が空いて、何か口に入れないと、死んでしまうくらいだった。
麺の3分の2くらい食べ終わったところで、サイダーを一気にラッパ飲みする。
お腹がある程度落ち着いたところで、あたしは部屋のベッドに転がった。
「あたしにあるのは、水泳だけ。水泳だけは、捨てられない」
そう自分に言い聞かせた。あたしには教室にも、家にも居場所はない。