ねぇ、運命って信じる?


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽ side恭護

修平に突然呼び出され、戸惑いながらも指定された店へ着くと…そこには修平と愛莉ちゃんが待っていた。
「わざわざ悪いな。愛莉にどーしてもって言われて断れなくてさ…」
にこやかな修平と対照的に愛莉ちゃんは渋い顔でジッと俺を見つめている。
どうやら彼女が業を煮やして修平に呼び出させたようだ。
「突然呼び出したりしてすいません。忙しいのに来てくれてありがとうございます。」
昔とは違い他人行儀な態度に違和感を覚えたがそれも仕方ないだろう。
「いえ。…それで…今日は何の?」
「あの、美羽が元彼に言い寄られていることはご存知ですか?…断ったらつきまとわれて困っていることは?」
そういえば綾乃が美羽に指輪のことを聞いた時にそんなようなことを話していたな…
何も話さないうちに痺れを切らした彼女は
「本当にこのままでいいんですか?恭護くんだって元彼が美羽に何をしたか知っているでしょう?」
内心では美羽にひどい仕打ちしたくせに今さらなに言ってんだよ。と憤ったが、自分にはその資格がないと思い直し…
「今の俺には何もできないから…」
力なく笑いそう言うだけで精一杯だった。

まだ愛莉ちゃんは何か言いたげだったが修平がその場をおさめてくれた。

俺じゃなくても、あいつがどうにかするだろ……でももし、あの指輪の意味が違っていたら。俺は…
もし、彼女が彼と付き合っていなかったなら……もし…

今日こそ彼女にあの指輪の意味を聞きに行こう。そう思い立ったはいいものの…なかなか一歩が踏み出せずに式場の近くに車を止めたまま…彼女が式場から出てくるのを待っていると、俺と同じように誰かを待っているらしき人がいた。
しばらくした頃…裏口から人影がみえた…彼女だった。車を降りようとしたら、さっき見かけた人が彼女へ近づいていくのが見えて出ていくタイミングを完全に失ってしまった。彼女と何やら会話しているようだが…なんか彼女嫌がってないか?あいつ強引に迫ってるんじゃないのか?もしかして愛莉ちゃんが言っていた例の元彼があいつなのか。
気付くといてもたってもいられず車を飛び出していた。
「いい加減やめたらどうです?彼女嫌がってますよね。」
彼女はホッとしたのと同時に何故俺が助けてくれたのか、測りかねているようだ。とりあえずこの男をなんとかしないと。ヤツの左胸にあるバッチに目が留まりある考えが浮かんだ。こんなやり方はしたくないがヤツがしたことを思えばこれくらいは許されるだろう。
ヤツの耳元で「あなた丸山電機にお勤めなんですね。…ではナカハラホームと取引きがありますよね?これ以上彼女につきまとったらあなたのくらい簡単に左遷できますから…それが嫌なら2度と彼女に関わらないでくださいね。」
邪魔されて相当苛立っているようだ。
「あんた誰だよ!邪魔すんなよ。」
優しく言っても分からない様子のヤツに苛ついたが手短に「あなたの会社の大手取引き先がうちの下請けといえばわかるでしょう。」
声色が低くなるのを感じながら言い放つと、ようやく理解したのかサッと顔色が変わりそそくさとその場を去っていった。

「美羽!お前どうしたんだよ?…大丈夫か?」
突然後ろから聞こえた声に振り向くとそこには長身で柔和そうな男が立っていた。…ただし俺に向けられる視線は敵意をむき出しにしたものだったが…。
「…奏くんどうしたの急に?今ね、また田中につきまとわれて困ってたところを中原さんが助けてくれたの。」
彼女の恋人だろうか?聞きたかった答えは目の前に転がっているのか……それにしてもこの人とどこかで会ったことがあるような気がする…
「そうだったのか、悪かったね。…君どこかで会ったことないか?とりあえずここじゃなんだから場所変えようか。」
その場を去ろうとしていた俺を引き止め有無を言わせずついて来るように促した。
彼からいまだ探るような視線は感じるものの、さっきの敵意は消えていた。
仕方なくついて行くと…少し歩いた先に建物が見えた。外観はお洒落なカフェのようだがまだ改装中のようでよく分からないが庭が広くたくさんの木々が植わっている。

慣れた様子でその中へ入っていく2人を眺めていると振り返った彼女が「どうぞお入りください。」と小さな声で呟いた。他人行儀な彼女の横を通り過ぎ店内の奥にある丸く緩やかな曲線を描いたテーブルと同様の椅子に腰掛けて待っているその人の正面に座った。
「ここはもうすぐオープン予定なんだ。”Little feather (リトルフェザー)”はSky moreとも契約していてね、ガーデンウェディングもできるように設計したんだ。担当のサポートとして美羽も関わっているんだ。…それにさっきの彼を避けるために美羽はここを利用していたから。…何よりこの店の名前は美羽からとったものなんだよ。」
勝手知ったる彼女に疑問を抱いていたが…それを問う前に彼から思いもよらない答えが聞けた。…そうだったのか。でも、俺が1番聞きたかった答えはそれではない…それに店の名を彼女からとったってどういうことなんだろうか。新たな疑問がまたひとつ生まれ戸惑っていると…目の前の彼が突然何かを思い出したように
「ねぇ、君。中原くんでしょ?…去年かな、そちらの会長のお誕生日に招かれてね。あの時、君は確か海外からこの為だけに呼び戻されたと言っていたような気がするな…祖父と一緒に挨拶したんだけどわかるかな?」
柔和な表情に戻った彼の言葉で1人の人物が浮かび上がってくる。
「あなたは藤咲さんのお孫さんの…」
名刺を出しながら彼はまたひとつ爆弾を落とした。
「そうです。藤咲奏と申します。…ちなみに美羽の従兄です。先程はありがとうございました。」
従兄って…じゃあ彼女の恋人ではなくて身内なのか。1番知りたかった答えを聞き、希望の光がみえてきた。
「いえ。……従兄ですか。じゃあ店の名前というのは?…」
「あぁ…それはね、うちの祖父がレストランやカフェを出店する時に家族の名前から店名やコンセプトを決めることがあるんだ。ここは美羽の名前からとったってわけ。それに祖父がここに出店したのは視察も兼ねて美羽に会いにくる口実が欲しかったからなんだよ。」
これは身内しか知らない話だけど。と苦笑しながら教えてくれた。
美羽は藤咲さんの孫だったのか。…全然知らなかった。

結婚すると誤解したままの彼女に真実を話したら俺の元へ来てくれるだろうか?…それとももう遅いのか?

ひと通りの説明とお礼を言って藤咲さんは美羽に何かを話したあと戸惑う彼女を置いて俺に一礼してさっさと店内から出て行ってしまった…。