葉月の所為でこんな目に遭ってるのにどうしてそんなこと言われなきゃならいの、と抑えれない思いと溜まりに溜まった疲れからの苛立ちが思わず声に出た。
「浬(かいり)、俺と別れたいのか?」
シャワー室にこぼれ落ちた言葉が響いた。
怒ってるのか泣きそうなのか分からない表情で私をジッと見る葉月。
それはまるで『捨てるな』というような眼差しで、それは、呪縛だ。
なんで、こんな目に遭わなきゃいけないんだろうって思う。
こんな目に遭ってるのは全部、葉月の所為なのに。葉月が招いた種なのに。どうして私が尻拭いをしなきゃならないんだろうって、ずっと思ってるよ。
けど、こんな生活、いつまで続ければいいの…?
「……浬」
浴びせたい言葉は喉元を超えてるのに、ぶつける事が出来ないそれを、葉月はそれごと塞いだ。
「はづ、」
ぶつけられる口唇に逃れようと顔を逸らすけど後頭部を抑えられて逃げられない。
抵抗する手は壁に縫い付けられ自由を奪われる。
こんなの愛する人へのキスじゃない。征服に近いキスだ。
前はあったはずのなきゃいけないモノが、今は違うモノに姿を変えてるのは確かで。
それは今まで積み上げてきた月日が象ったものなのかもしれない。

