それはお金の用意が出来た連絡だと分かり、携帯を返して欲しくて葉月に手を伸ばした瞬間、腹部を思いっきり蹴られた。
言葉にならない悲痛の声を出してお腹を抱える私を、葉月は今まで見たことない怒りを目に宿し、私を見下ろした。
「お前、外に男作ってたのかよ!?」
「違ッ」
否定をしようとする私に、言い訳なんかするなと言うように葉月は何度もお腹を蹴る。
……葉月が、葉月じゃない。
こんな葉月は葉月じゃない…。
目から飛び出し頬を伝う涙は身体的な痛みからじゃなくて、葉月からぶつけられたそのものだ。
今まで怒鳴り合いの喧嘩だってしたけど手を挙げられたことなんてなかった。
ものに当たることはあっても、私にそれをぶつけられたこともなかった。
私の知らない葉月が、私の知ってる葉月を奪っていく。
「この男何処のどいつだ!!ぶっ殺す!!!」
「…は、づき」
「コソコソと昨日コイツと会ってたのかよ!?」
「ちが、う」
違う、そうじゃない。
そう言いたいのに意思とは裏腹に溢れ出す涙と嗚咽が邪魔して言葉が声にならない。
こんなはずじゃなかった。今日が過ぎれば今まで通りの日常があったはずなのに…。

