ニクセ



関東が梅雨入りをしたと、どこの天気予報もテンプレートのような報道に聞き飽きていた。

つい最近まで梅雨に入るか入らないかの瀬戸際の報道だったのに、気づいたら梅雨入りをしていたらしい。


どこに行ってもジメジメしていてどんよりした日々が続く。

今日に限ってコンクリートを打ち付ける土砂降りなんて、何かの予兆だと疑ってしまいそう。

窓際のテーブル席から見える外の横殴りな雨を見て、時間帯が最悪だったと後悔した。


駅前のカフェに15時。

マキさんに電話をした日の次の日にセッティングがされた。
時間がない私から凄く有難いレスポンスの速さだった。


誰が来るとも名前を知らされていない。ましてやこんな人が多い駅前のカフェが待ち合わせで、店内で浮かないか心配になって来る。

この前お店に来た黒いスーツで「如何にも」な格好で来ない事を願っていると、



「ーーーー貴女が "カイリ" さんですか?」



ニヒルな笑みを浮かべた、蛇みたいな雰囲気の男が目の前に立っていた。


一瞬でこの人だと思った。

一見、サラリーマンを思わせる風貌であるけれど、「そっちの人」と言う肩書を知って上でこの人を見ると異様な雰囲気を感じる。