その後の事は、覚えていない。
多分、暫く俺はその場にただ呆然と立っていたんだと思う。
気付いたら、陽は落ちていてそこにはもう、のばらの姿はなかった。
電話をしても出ない、マンションに行ってみても鍵は閉まってるしチャイムを押しても返事はないし、電気もついてない。
どこに行ったんだよ、のばら。
今、どこにいるんだよ。
闇雲に走り回った所で、見つかるわけもなく。
ああ、南さんなら何か知ってるかも。
"はい?もしもし…"
『南さん!のばらと一緒にいたりする?』
"へっ?のばら?いないよ。あの子、今日は松岡くんと帰るからって言ってたけど…一緒じゃないの?"
『途中で喧嘩して……のばら、家に帰ってないみたいなんだ。電話も出ないし、もしかしたらと思って……』
あれをただの喧嘩で済ませていいのか迷ったが、詳しく説明している暇もない。
"喧嘩したの?珍しいわね。あたしの所には来てないけど……あたしからも連絡してみるわ。"
『…頼む』
頼む。俺の電話は出なくていい。
せめて、南さんの電話は出てくれ。



