それを見た昌は、のばらの腕を掴んで止めようとしている。



『おい、昌。触るな』



『えっ、あ、ごめん。でも、これは不可抗力で…』




昌の手を叩き落として、のばらの襟首を掴む。


のばらからは、詰まった声がしたけど気にしないでおこう。

 


『のばら、定期入れは昌に譲ってやれ』


「…ッゲホ!離せ、これはあたしのだ!」


『のばら!』


「あたしの!」



こいつは、ホントに…。




『は、波留!もういいよ。俺は違うの買うから、その手離してよやった方がいいよ』




いまだに襟首を掴まれながら、前進しようとしているのばらは、首は絞まるし顔も大変な事になっていた。



思わず、レジのスタッフもぎょっとしている。




これは、やばい。

ゆっくり手を離せば、のばらは飛び付くようにレジにすっ飛んでった。




『…昌、悪いな』


『いや、いいよ。誕生日までにはまだ日にちあるしさ』



そんな俺たちの会話をよそに、のばらは綺麗にラッピングされた定期入れを持って可愛い笑顔を向けていた。




うん。可愛いな。