「そうなんですか?私何もしてませんよ?」
翔琉を見たのもあの時が初めてだし。
というか、向こうは顔なんて絶対わからないだろうし。
いつもフード深くかぶってたし。
「だから、愛優ちゃんが美姫だってことにすごいびっくりした。俺らがまだ下っ端だった頃の話なんだけど...
前の総長が彼女に振られて酔っ払って夜に街中を歩いてたらヤクザに絡まれてさ、
とても戦える感じじゃなかったみたいで
結構ボコボコにされてた時にある女の子が現れて
その子が全員ボコボコにして総長を助けたらしいんだ。
後になってわかったことはその子が“美姫”と呼ばれていることだけ。
だから、総長の命の恩人って感じで俺らも尊敬してるってわけ。」
だから、私は翔琉の顔も來輝さんの顔も知らないんだ。
「なんとなく覚えてるかも。あの時助けたのがまさか前の総長だなんて」
そういうと來輝さんはニコッ笑ったけどすぐに真剣な顔に変わった。
「ここに入った時さ、俺と翔琉が組めば最強だって言われてた。でも、ある日を堺に翔琉の目は変わった」
それは“花菜”という人物が関係してるのかな?
あの氷のように冷たい目は。
「...花菜」
あ、っと思った時にはもう遅くて
口から出てしまっていた。
「え?なんでその名前...」
來輝さんは驚いた顔で私を見てきた。
來輝さんはきっと何か知ってるんだ。



