溺愛の桜

刻々と待ち合わせの時間が近づいてくる。

メイク直しをして服も整え、車を走らせる事40分。

優生が指示した最寄り駅には、待ち合わせより30分も早く到着した。

ひとつの”不安”を抱えているせいで、人見知りのない朋奈にしては珍しく緊張していた。



「少し早いけど着きました。白い軽自動車の中で待ってます。ーーーと。」



朋奈を見つけやすいように特徴を伝え、いつもより少し音量を下げてオーディオを聴きながら待つ。



ピロリン♪



「3分で着く、か。」



優生からの着信。

顔文字や句読点のひとつもない素っ気ないラインが送られてきた。

ここに来るまでのラインのやり取りは、会話は成り立っているものの彼の文面はすべて一言二言のみ。

”私、朋奈!よろしくね!”と送れば、

”よろしく”だけだったり。

見た目からはやんちゃそうなイメージだったが、実はクールな人なのかもしれない。

色々なイメージを頭の中で繰り広げていると、いつの間にか3分はとっくに過ぎていた。

駅前なので人はちらほら通るが、優生らしき人は見当たらない。



〜〜〜♪



すると、ライン電話がかかってきた。

発信は優生だ。

声を聞くのは初めてで、また少し緊張する。



「もしもし。」

「もしもーし、朋奈?」

「あ、うんっ。優くん?」



あまりクールとはいえない、はじめのイメージ通りやんちゃっぽい口調だ。

呼び名はラインでのやり取りで、”朋奈”と”優くん”で定まっていた。



「どこにいる?」

「え?駅前にいるよ?」

「あれ、最寄りのコンビニじゃなかったっけ?!ごめん、すぐそっち行くわ!」



そう言うと、電話は一方的に切られた。

どうやら勘違いで別の場所へ行ってしまったらしい。

案外おっちょこちょいのようだ。