溺愛の桜

「え、二人目?!」

「そう、今5ヶ月入ったところ!」



朋奈は向かいに住む幼なじみの永井千尋(ちひろ)の家に遊びに来ていた。

学生時代は別のグループで交流はあまりなかったが、卒業してからは職場が偶然近い事もあって一緒に行動する事が多くなったのだ。

この日はたまたま千尋の一つ上の姉、茅乃(かやの)から妊娠しているとの情報が舞い込んできた。



「名前決めてるの?」

「まだ考え中。出産予定は9月だから、夏っぽい名前がいいかな〜って旦那とは話してるけど!」

「かやちゃんいいな〜幸せそうで〜。」

「トモは彼氏とどうなの?」

「・・・うーん。」



丁度今は触れてほしくないところを突かれ、朋奈はアイコンタクトで千尋に助けを求める。



「この前ま〜た別れたんだって。」

「またぁ〜?!」

「そんな、二人して”また”って強調しなくても・・・。」



さすが姉妹。

繰り下げ方がおんなじだ。



「彼氏27歳だったっけ?」

「元!元カレ、ね。27歳のわりに考えがガキすぎるんだよ。器小さいし、ありゃダメ男だ。」

「トモ、毎回別れるとダメ男扱いだね。」

「だって本当の事だもん!」



恋は手に入るまでが楽しい。

とはよく言ったもので、朋奈は交際中の相手の欠点を見つけるとどうしても冷めてしまうのだった。

千尋との改めての付き合いは高校を卒業してすぐからだった為、朋奈の恋愛事情は誰よりもよく知っている。