手を繋いだまま、


お互いに無言で見つめ合っていると、


突然携帯の音が鳴り響いた。


――!


私達はお互いにハッと我に反り、


思わず繋いでいた手を離す。


「ご、ごごごめん…!」


顔を真っ赤にした太耀君は、


慌ててベンチから立ち上がる。


「私の方こそごめん…!

電話だよね…?出て大丈夫だよっ…!」


音は鳴り止まず、


太耀君は申し訳なさそうに頭を下げてから、


背中を向けて電話に出た。


「…もしもし。あー!ごめん。

ちょっと友達と話してたら遅くなった。

もうすぐ帰るから!」


太耀君は乱暴に通話を切ると、


振り返って私を見る。


何かを言おうと口を開くが、


何度かためらいながら、やっと口に出す。


「もし…嫌じゃなかったらうちに来る…?

体すごい冷えてるだろうし、

一度温かい所で落ち着こう?」


思ってもみない提案に戸惑うが、


家に帰りたくないのも確かだった。


何より…もう少し太耀君と一緒にいたい…


そう思っている自分がいる。


「もし迷惑じゃなければ…お邪魔します。」


私はペコリと小さく頭を下げてから、


太耀君の顔を見上げる。


そこには、いつも通りの笑顔があって、


さっきまでのドキドキとは違う、


優しい温かさが心に広がった。