紅茶にはミルクと蜂蜜を

「で、夏生。彼氏と今どうなっとるん?」

「うっ、えーっと…」

「相談乗ったるから。言い。」

 結局、なんだかレトロでこぢんまりした素敵な喫茶店を発見しそこに入店したのだが、注文を終えるやいなや佳代がさっきの話題を掘り返してくる。とりあえず、説明も面倒なのでLINEの画面を佳代に見せることにした。

「………うわっなにこいつ」

「ってなりますよねぇー…」

 私には付き合って1年半の彼氏がいるのだが、数日前の夜、突然私の裸の写真がほしいと言い出したのである。私も衝撃だ。

「で、ずっと断ってる最中と?」

「そうなんですよぉ…」

 普通に優しくていい彼氏なのだ、突然どうしたのか。理由も見当がつかないし、何より何故裸なのか。顔じゃダメなのか。

「そりゃ…まぁ送っちゃダメやな」

「だよね…リベンジポルノとか怖いしね…」

「で、送りたくないって言ったら相手がキレ始めたと」

「そうなんですよ…」

「率直に言うけど、別れたら?」
 
 佳代は呆れ顔でLINE画面を見ながらこちらに目をやる。

「でっ、でも今まで普通に優しくて楽しい人だったんだよ!そんな、この程度のことで別れるのは」

「この程度って、これ結構やろ。」

 よく話で聞いたり、見かけたことはあった。高校生の頃同級生が元彼氏に恥ずかしい写真をツイッターでばら撒かれてトイレで泣いていたり、登校拒否になったりだとか。
いくら心を許した相手とはいえ一糸まとわぬ姿を自分で撮って相手に送るなんてはしたない!と思っていた私がまさか当事者になるとは。

「うーんどうしたら良いのかな…」

「だから言ってるやん、別れよ」

「そんなーーそれしかない?わかりあえない?」

「だってこんだけ言っても聞かんどころかキレてるし、こんなん付き合っててもしょうがないやろ?」

 机に突っ伏してうんうん唸っていると、上から少し掠れ気味の低い声が降ってきた。

「お客様、お飲み物をお持ちしましたが。」

「あっはい、すみませ…」

 急いで顔を上げると、口をポカンと空けた佳代と、


 物凄いイケメンが目に映った。