いびつに光る






毎週金曜日、一週間でその日だけは、どんなに眠くとも急いで学校へ行かなければならない。

いつもより二つ早い電車に乗ると、早足で学校へ向かった。

まだ誰もいない静かな校門を通り過ぎ、哀れみの瞳を向けてくる教師へ挨拶をし、3階にある視聴覚室の扉を開けた。


「 ......あぁ、今日も早いですね 」


なかにいたのは、一人の男。

学校内では珍しい黒髪で、同じ色の眼鏡がよく似合っている。

人畜無害な顔をしたコイツは、篠川杏璃は、ジョーカーのナンバー3だ。

そして、ーー俗に言う、元カレ、でもある。

篠川杏璃は眼鏡を外し、柔らかい髪をかきあげた。

そんな彼を急かすように、無言で右手を差し出す。

すると、篠川杏璃は眉間に皺を寄せ、私の胸ぐらを掴んで壁に押し付けた。


「 今日も、言うつもりはないんだ 」

「 ......ないよ 」


あぁ、その瞳に映るのは、蔑みでも憎しみでもなく、ーー欲情。

ふっと口角を上げて、篠川杏璃の胸ぐらを掴み返す。

そして、ぐっと引き寄せた。


「 そんなにしたいなら、する?私、知ってるよ。杏璃はあの頃から、私を征服したくて堪らないんだ 」


私に、捨てられた、あの日から。

篠川杏璃と付き合っていたのは、中学三年の一年間。

その間ずっと、そして別れてからも、篠川杏璃の瞳は欲情に塗れていた。

そんなコイツが、ナンバー1でもなくナンバー2でもなくコイツが、報復の首謀者なんて呆れる。

篠川杏璃は、屈服させたくて堪らないんだ。


『 ごめんね、私もう疲れちゃった。別れよ 』

「 私、杏璃となら、嫌じゃない 」


どの口がそんなことを、と心の中で笑みを漏らす。

変わらない、杏璃の薔薇色の唇。

私はそれを、喰らった。


「 んっ...... 」


互いの唾液が混じりあって、舌が絡み合って。

杏璃は私の足を割って、その白足を挟み込んだ。


「 は、ぁっ...... 」


杏璃のことは別に好きじゃない。

でも、可愛いとは思う。

私を滅茶苦茶にすることだけを生き甲斐に生きている男。

たまに考える。

杏璃は、私がいなくなったらどうなるんだろう。

なにも知らない姉は、杏璃のことを弟のように思っていたという。

ナンバー2より、ナンバー4より、可愛がっていた。

もしかしたら、コイツが姉をーー


「 なあ、俺はもう、壊れそうだよ 」


唇を離した杏璃は、胸元に顔を埋めてそう言った。


「 早く、言って。助けてって。お願い、お願いだ桃李 」

『 いやだ、いやだ、桃李の嫌いなとこ全部直すから、そんなこと言わないで、桃李 』

「 ......絶対いや 」