白い壁に無数の落書き。

黒髪なんて殆ど見当たらない派手な生徒。

疲労に老けた教師。

広がる空は青くても、

其処は決して綺麗な場所なんかじゃない。


「 おはよう、僕らの汚れた女神サマ 」


ニコリと笑った男は、その瞳に蔑みを灯して、私の鎖骨に噛り付いた。

剥き出しになった其れは、砕けそうなくらい強い力を受けて、情けない朱に染まっていく。


「 ......っいた、 」

「 え、なに?もっと?ちゃんと言ってくれなくちゃわからないよ、トーリちゃん 」

「 い、たいっ 」

「 そっかぁ。でもトーリちゃん、痛いの好きでしょ? 」


男は舌なめずりをすると、首筋へ唇を動かす。

そして昨日、自分がナイフで切りつけた傷を、舐めた。


「 ......ひっ 」

「 可愛いね。痛みすら快感に変えちゃうなんて、都合のいい身体してる 」


低い声。

名前も知らないこの男は、特に嫌がらせがひどかった。

......あぁ、もう嫌がらせなんて、その程度の話ではないか。

じゃあ言い変えよう、"性的暴行"だ。

男が其処を切りつけたのは正しく、私の中に欲望を吐き出したその瞬間だった。

けれども飽き足らず、何度も何度も制裁を加える。

この男の瞳を見るたびに思う。

あぁ、この男はそれほどまでにジョーカーを愛し、姉を愛していたんだ。


「 ねえトーリちゃん、桃花さんを出せよ。そしたら、全部終わる 」


甘い囁きは、悪魔の囁き。

流れていいことなんて、一つもない。

私が首を振ると、男は瞳を濁らせる。

ーー愛していたものほど、裏切られた時の憎しみは、大きいものだ。


「 そっかぁ。残念だよ 」


そして今日も男は、私の中へ欲望を吐き出した。