今野くんと翡翠ちゃんなど若手を連れて店舗へ降りる。
樹理たちには秋冬向けのカタログ制作が任されているので、そちらに集中してもらうことにした。
明日のフェアまでにカタログも間に合わせないといけない。


季節の変わり目は、やることが盛り沢山でこの業種だと忙しい。


新しく練り直したポップやポスターの配置を、販売部の社員と実際の店舗を回りながら相談していく。


閉店後にすぐにフェアの準備に取り掛れるように、入念に確認作業をおこなった。


「へぇ、テキパキ仕事してんだな」


ちょうど販売部との連携チェックを終えて、売り場の変更ディスプレイのアイテムを取りに行こうと踵を返したところに、何の用で現れたのか健也がやって来た。


おそらく彼のいる住宅インテリア部で、何か必要になった物があって店舗に降りてきたのだろう。
小間使いが好きな彼にしては現場に現れるのは珍しいことだ。


「おかげさまで前の上司の教育が良かったみたいで。なんとかやれてます」


目には目を、皮肉には皮肉を。
……ってわけじゃないけれど。
実際に彼の仕事ぶりは横暴なところもあったけれど、ちゃんと結果を残していたので見習う点も多々あった。
否定するつもりは無い。


「この間、酒田部長と話す機会があってさ。結が主任のサブについてるって聞いて驚いたよ。真面目だけが取り柄の堅物新入社員だった頃の結を思い出したんだ。成長したもんだな」

「サブというほどの仕事はしてないですよ。ほんのお手伝い程度です。小野寺部長こそ、忙しそうですね」

「まぁ、けっこう需要があるからね。それより…………」


健也は周囲に一瞬目を配り、そっと身をかがめて私の耳元に口を寄せた。
コソッと耳打ちされる。


「巴が失礼なこと言ったみたいで、悪かったな」


予想外の言葉に耳を疑った。