部屋に戻ってすぐに彼の横に

駆け寄って行ったが、

かける言葉が見つからない。



.....................



何も言わず、彼の手をそっと握りしめた。










数秒後、彼は何か決意したように

わたしの手を放し「ごめん」とだけ言い残し

一度も振り返ることなく行ってしまった。











その切ない後ろ姿は今でも鮮明に覚えている。

身長180cmもある蓮がとても小さく見えた。










実はこの時、私は実感がなんとなくわかなかった。

わたしって蓮のこと全然知らなかったのかなと

この一連の出来事を冷静に捉えていた。












どうして突然いなくなってしまったの……


というような感情は正直なかった。








そのせいか、涙も流すことなく

ちょっとの間は普通の日々を過ごしていた。