熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~


内容はというと、芸能人を父親に持つ一般人の男のコが、芸能人の息子であるがゆえに体験したいろんなエピソードを、彼の初恋のエピソードを交えて描いたものだった。

まちがいなくこの小説の主人公のモデルは航平くん自身だと思うし、このおハナシ自体が実話に基づいていると思う。



翌日は2学期の始業式だったから、誰にも見られないように十分、念入りに、細心の注意を払って、2人で校舎の屋上に上がった。

「はじめて小説書いたなんてウソでしょ?」

昨夜のうちに彼の処女作を完読していた。

「本当さ。俺はウソなんて言わない」

「そっか。でも、さすがに新聞の記事を書いてるだけあって、航平くんの文章を読んでると、なんか、その光景が目に浮かんでくるみたいだったよ」

「フッ。ありがと♪」

そう言って、眉間にシワ寄せながら、おでこの真ん中から、手グシで長めのサラサラ前髪をわさーっと後ろのほうに、かき上げる彼。

「…つーか、ごめん。俺のほうが先にケータイ小説家デビューしちまったな」

「あたしなんか夏休みいっぱいかかって、まだ第1話さえ完成してないっていうのに。な~んか、軽くジェラシー感じちゃうかもぉ」