熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~

サイアクの選択肢だ。

「航平くんは知らないだろうけど、みさきちゃんちって、あたしンちの“お向かいさん”なんだよ。呼べるわけないじゃん」

「じゃ、俺ンちに来る? …って。ソレは無理か。あ、言っとくけど、もしお前が俺ンちに来ても、別に俺、ヘンなこととかするつもりねぇからな」

「うん、でもやめとく」

「え、俺って信用されてねぇのな」

「…じゃなくて、航平くんちに行くところを目撃される可能性もあるから」

「あ~、めんどくせぇっ!」

その声で彼がイラついているのが分かる。

あたしだってイライラしている。会いたいのに会えないんだから当然のことだ。

「じゃ、家からメールするときはパソコンでやりとりしようぜ。パソコンならケーブル線でつながってるから、電波の影響とかカンケーねぇと思うし」

「航平くん、アタマいい♪」

尊敬しちゃう。

「そーか、フツーだけどな」

「あ、でも電話のほうって、もしかして…」

「そうさ。ケータイじゃなくて、家の固定電話で話すんだ」