熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~


みさきちゃんはとにかく顔が小さい。おまけにほっぺたからアゴにかけてのラインがシュッとしていて、アゴなんかグサッと突き刺さりそうなほど、とがっていてオトナっぽい。

赤ちゃんのほっぺたみたいにプクプクしていて、笑うと“えくぼ”のできる童顔のあたしにしてみれば、みさきちゃんの顔は本当にうらやましすぎて、できることなら首から上を全部みさきちゃんのと取り替えてもらいたいくらいだった。

でも、見た目で勝てないのはあたしのせいというより、むしろ母のせいだ。あたしの母がみさきちゃんの母親みたいに美人だったら、こんな結果にはならなかったからだ。


…とはいうものの、見た目で勝てない以上は中身で勝負するしかない。

さいわい頭の中身のほうは、ぶっちゃけ、あたしのほうが勝っている自信がある。

だけど、その自信があたしのクチを滑らせた。


「ねぇ、母さん、心配しなくても、あたしテストじゃ、みさきちゃんに負けないから♪」


モチロン言ったあとで、しまった、と思った。

まだ、電話の向こうのみさきちゃんとつながったままだったのに気づいたからだ。

「ご、ごめんね…」

あたしは恐る恐る言った。