「そっか…そーなんだ……」
だから、あたしが花瓶を割った犯人にさせられそうになったときとか、セクハラされても黙っていようとしたとき、あたしのことを助けてくれたんだ。
「それと、もうひとつ」
顔の前で右手の人差し指を立てて言う彼。その表情はさっきまでの真剣なものとは一変して、明るく晴れやかなものだった。
「文章を書いているときは、俺は“俳優・比嘉洋介の息子”としてじゃなく“比嘉航平”というひとつの独立した人格として、みんなに扱ってもらえるから、だから俺は文章を書くのが好きなんだ」
「比嘉洋介の息子としてじゃなく…比嘉航平というひとつの独立した人格として扱ってもらえる……?」
思わず彼の言うのを繰り返していた。
「例えば今回俺が書いたケータイ小説。どこの誰が書いたものか分からねぇのに、みんなが読んで感想までカキコミしてくれる。つまり俺を芸能人の子どもとしてじゃなく、ひとりのケータイ小説家として認識してくれているってことさ」
「そっか。ヘンにトクベツ扱いされないで、みんなと同じに扱ってもらえるってことか」
「そうだ。比嘉航平っていう人間がここにいるぞ、ってみんなに分かってほしいから、俺はその表現方法として文章を書くんだ」


