私と中本先生がもめて(?)いると、そこに誰かがやって来た。
「おい…斗磨、いい加減にしろよ」
その誰かとは武志である。
「「荒木先生…!」」
「美月怖がってんじゃん。迫るのはやめろよ…って、あ」
彼の声に、私の恐怖は少しだけ収まった。
でも…今、この人私を美月って呼ばなかった…?
中本先生の前で。
『美月』と名前で呼んだ武志を見て、中本先生はギョッとしている。
「まさか…」
私はまた怖くなって、武志を縋るように見つめた。
すると、私には予想もしていなかった展開が起こった。
勝ち誇ったように、武志は言う。
「斗磨…残念だったね、美月は俺の女だ」
「…え!?」
「な?美月」
「うん…」
私が小さな声で同意すると、彼は私の顎を持ち上げてーー
そっと、初めてのキスをした。
私が唇を触りながら戸惑っていると、彼は中本先生と私に向かって言った。
「ということで斗磨、美月には手出しすんじゃねーぞ?…じゃ、美月行こう」
そのまま、私の肩を抱き駅とは反対方面に向かう。
ちらりと後ろを見ると、中本先生が呆然とこちらを見ているのが分かる。
…大丈夫かなぁ。明日から…。