「…うちの旦那ね、私にはそんなに優しくないのよっ!!娘と息子には優しいのに…!」
そう嘆く木本先生を、室井先生がたしなめる。
「まぁまぁ。確か木本先生のお子さん、どちらもすごく可愛いのよね!何歳だっけ?」
「娘が5歳と、息子が1歳です」
「「「「「可愛い~っ」」」」」
どちらも可愛い盛りではないか。
羨ましいなぁ、私も…。まだ付き合い始めたばかり、彼との将来を考えるのはまだ早い…よね?
「そういえばさー」
と、麻未さんが私に話を振る。
彼女は去年私と同じ学年を持っていたため、仲が良いのだ。年も近く、私の二つ上である。
「みーちゃん、彼氏出来たぁ?」
正直、カッコいい系の体育教師が『みーちゃん』なんて、初めの頃はかなり引いたが…今は慣れた。ルックスはイケメン(女性的に)だが、女子力は私より高いし、声も意外と可愛い方だから(ただしぶりっ子ではない)、まぁおかしくはない。
「えぇっと…その…い、いえ、残念ながら…はい」
どうしても同僚との関係をバラしたくない私は、どうにか誤魔化そうとする。…が。
「あっれ~?美月ぃ?こないだ彼氏とラッブラブでデートしていたのは誰だっけぇ?」
「「「「えええっ!!」」」」
出ました、優子。いつも斜め上にキリッと引いて、そしてその先をやっぱりキリッと曲げた眉毛が、普段以上に尖っているように見える。
口元にも悪意を感じる微笑みが…。
優子、お願いだから秘密を暴かないでくれ…!!