翌朝、目覚めると右手に温もりを感じた

「ん?新?」

すうすうと寝息を立てて眠る新

かわいっ、頭撫でよう

サラサラした髪に、私のピンが刺さっていた

「ん…うーん。ここ…」

びくっ

起こしちゃったかな?

「ここ…行くな…何処にも行くな…お前は失いたくない…」

薄っすらと涙を浮かべる新

揺すり起こす

「新?大丈夫?」

「っ!ここ、夢か…よかった…」

私の手を強く握る

「私はここにいるから大丈夫。しばらくここに入院だし。」

「何かあったら俺に連絡しろ。あいつのことは俺がなんとかする。」

「うん、ありがとう新。無理は、しないでね、私と同室になっちゃうよ?」

「俺はそれでもいいけど?」

「ばかっ!早く行きなよ、遅刻するでしょ!」

ふいっとそっぽ向く私に新が耳元で囁く

「行ってくるよ、ここ。また帰りに寄るから。」

「う、うん!」

見送る私、笑顔で行く彼

「如月さん、血液検査です。腕を出してください。」

はぁ、痛いのは嫌

「はい、これでいいですか?」

腕まくりをして看護婦さんに差し出す

チクッ

ん!ちょっと痛い

赤い液体が細い管を通って試験管に入っていく

「はい、取れました。」

はぁ、憂鬱

新、早く来てね

私はベッドをギャッチアップして絵を描いていた

新を思いながら下手くそな絵を描き上げる

暇だなぁ、痛いなぁ

おもむろに携帯を見る

新からLINEが入っていた

「どう?調子わるい?」

「大丈夫、痛むけど心配しないで。」

「心配するよ、彼氏だし。」

「朝比奈さんは大丈夫だった?」

「話し合ったよ、詳細は後で話す。」

「うん、わかった。ねぇ、新。」

「なに?」





















「大好きだよ。」

LINEだから言える、恥ずかしくて普段口にはしないけど

「ここの口から聞きたい、文字じゃなくて。」

「やーだっ」

意地悪してみた

「いいの?ここちゃん、意地悪したら俺怖いよ?」

彼が今どんな表情をしているのか私にはすぐにわかった。