おにいちゃんの友達

その日の部活の後、兄とマサキのことが気になりながらもマドカとカフェでお茶をしていた。

なんとなく家に帰るのが億劫。

母は、兄が学校に行ってないことを知らない。

でも、私は知っちゃったわけで。

母に白を切り通すことは難しかった。

こういう大事なことは、やはり母の耳に入れておいた方がいいことも十分わかってる。

だけど、それを今日いうべきなのか、マサキがアクション起こしてからの方がいいのか。

そのことが、幼い私にはまだ判断がつかなかった。

時計を見ると18時半だった。

「そろそろ帰る?」

時計を気にしてる私に気づいたマドカが言った。

「ううん。まだいいよ。」

「でも、ユイカ、お兄ちゃんのこともあるしそろそろ帰った方がいいんじゃない?」

本当は、そうなんだよね。

マサキはもう電話したのかな。

でも、マサキも今帰宅してるくらいの時間だから、まだかもしれない。

ただ家に帰るだけなのに、妙に緊張していた。

「なに?ユイカひょっとして家に帰りたくないの?」

さすがマドカだ。

私のなんとなくのそういう雰囲気を感じ取ってくれた。

「そうだね。なんだかそういう気分。お兄ちゃんのことは心配なんだけど、今朝はえらい事態になってることを知っちゃったからさ。お母さんの顔見るのも辛くって。」

「うん。私も余計なことしゃべっちゃったかもしれないよね。ごめん。」

「それはないよ!マドカから教えてもらわなかったら、ほんとやばかったんだから。マサキも動いてくれるから大丈夫だろうけど、お母さんはきっとショックだと思うんだよね。」

「そうだよね。おばちゃんが一番心配かも。」

「どうして、世間の家庭は順風満帆なのに、うちの家だけこんななのかなぁ。」

「うちの家だけって、そんなことないよ。どんな家庭でも色々悩みはあるんだよ。」

マドカはそう言うと、頬杖をついて遠くを見つめていた。