母に電話でご飯をしかけるよう頼まれていたので手早くしかける。

ご飯が炊きあがる少し前に母は帰ってきた。

「ごめんね。遅くなって。」

「おかえり。」

母におかえりって言うのはなんだか新鮮な気がした。

「お腹空いたでしょ?すぐに用意するわね。」

「ご飯しかけといたから、もうすぐ炊けると思う。」

「ありがとう。」

母は急ぎ足でキッチンに入って、バタバタと準備を始めた。

ふいにリビングにいる私の方を振り返る。

「あら?シュンタは?」

そういえば、兄はあれからまた部屋にこもったままだった。

ほんと、何やってんだろ。

「私が帰って来た時も部屋で寝てたし、まだ寝てるんじゃない?」

ソファーに腰掛けたまま、憮然と答えた。

「そう。」

母はそう言ってまた前を向いた。

「今週末、おばちゃんのお見舞いにお兄ちゃんと行ってこようと思うんだけど。」

ガスコンロに点火された音がする。

お味噌汁でも作っているようだ。

「おばちゃん、ベッドで寝たままかもしれないから、合い鍵渡すわね。」

玄関に出ることすら辛い状況なの?

それはかなりショックなことだった。

「私達が行ったら、おばちゃん疲れちゃうかな。行かない方がいい?」

「行ってあげたらきっと喜ぶわ。元気わけてあげて。」

兄と二人でちゃんと元気わけてあげれるんだろうか。

寝てばかりの兄と、好きな人にちゃんと向き合えないような自分。

急に色んな心配が頭をもたげた。