おにいちゃんの友達

「ごめんごめん。ちょっとは言い過ぎたけど、俺の愛情表現だと思ってユイカも気にすんなって。俺も全然気にしてないから。」

マサキはそう言いながら水を飲んだ。

ちーっとは気にしろっての!

だけど、そんなこと言って気にしてないふりしてんだよね。

きっとポケットの中にあめ玉用意していつ渡そうかって考えてる。

「話戻すけどさ、どうなのさ、高校生活は。」

出た、あめ玉。

せっかくくれたあめ玉に素直に乗っかることにした。

「楽しいよ。自由になった感じ。」

「そっか。マドカちゃんは?」

「私も。中学の延長みたいで、楽しんでます。」

兄は、ようやく元の雰囲気に戻って安心したのか、またゆっくりとパスタを食べ始めた。

マサキが言った。

「いいよなぁ、お前らは。まだまだ高校生活楽しめてさ。俺達なんかこれから受験生だぜ。」

「本とだよ。今のうち楽しんどけよ。」

「まぁシュンタはお利口だから、余裕で志望大学受かりそうだけどさ。」

「んなことないよ。最近勉強に身が入らなくて困ってるんだ。」

兄はそう言いながらほおづえをついた。

「そうなの?いつも部屋にこもってるからてっきり勉強に集中してるのかと思った。」

私は少し驚いて兄を見た。

「部屋にこもってるからって勉強ばっかしてるわけじゃないさ。」

「そうそう、男って結構色々忙しい生き物なんだよ。」

マサキは、いやらしい顔をして笑った。

ふん。

その忙しいことが何なのか別に知りたくもないけど。

「勉強に集中できないって、シュンタもいよいよ誰かに恋でもしちゃってるとか?」

兄は黙ったままマサキを一瞥すると、少し口元をゆるめた。

「へー、否定しないんだな。」

マサキは兄のその態度に本気で驚いた様子だった。

「じゃ、俺と同じじゃん。いっぱい恋して楽しもうぜ。」

マサキが明るく言った言葉に、私一人だけが笑えずにいた。

「お前と一緒にしないでくれる?俺、そんなんじゃないから。」

「恋してんじゃないの?」

「してないよ。色々とさ、まぁ考えることがあるだけ。」