おにいちゃんの友達

「少し懐かしくなってさ。あいつは昔から頭が良かったし、どこ目指すのかなって気になっただけ。」

「あいつ」という言葉に思わず反応して、兄の顔を見上げた。

マサキですら「アイカちゃん」って言ってるくらいなのに。

あいつ、だなんて、相当親しかったのかな。

兄と目が合った。

「何?」っていぶかしげな顔をして私を見返してきた。

あ、やばい。

これは地雷かも。

私はわざとらしくにんまり笑って、またお皿に視線を落とした。

マサキは、「あいつ」を聞き逃したのか、地雷だって気づいたからか大人しく食べている。

マドカも、急に静かになってまたフォークでパスタを絡めていた。

何?

私も変だけど、急に皆の雰囲気も変になってるんですけど。

パスタを静かに食べている三人を見回していたら、またもやマサキと目が合った。

「何じろじろ見てんだよ。」

その少し冷たい口調に不覚にも落ち込む。

「別に。なんか急に静かになったなぁって。」

落ち込んだトーンのまま、ようやくマサキに言葉を返した。

「っていうかさぁ。ユイカ。」

ようやくしっかりとマサキの目を見た。

「うちの高校はどう?楽しくやってる?なんか訳分からん顧問の卓球部に入ったって聞いたけど。」

「誰に聞いたの?」

マサキの目を見つめているうちに慣れてきたのか、ドキドキが少しずつ和らいでいく。

「もちろん、お前の兄貴。」

「サボりすぎな顧問って言ってただろ?」

兄が私とマドカを交互に見ながら言った。

「まぁね。だから今日もこうやって一緒に来れたわけだし。」

マドカと目を合わせて笑った。

「でもさ、お前らの中学女子バスケ部、結構いいとこまで行ってたんじゃなかったっけ?」

「そうねぇ。でも県大会一歩手前までよ。県大会まで行けてたら、高校でも続けてたかもしれない。ね?マドカ。」

じっと黙ってるマドカに少しイライラして振ってみる。