おにいちゃんの友達

ほどなくして、席に案内された。

私は兄と向かい合って座る。もちろん敢えてそうしたんだけど。

マサキが斜交い前に座ってる。

まだきちんと正面から顔が見れないでいた。

きっと見ちゃったら、普段の自分じゃなくなりそうで恐い。

でも、見なかったらきっとずっとずっとこのドキドキのまま最後までいなきゃいけないかもしれない。

少しでもならしとかなきゃ。マサキの姿を見ることに。

兄とマドカはメニューを広げていた。

きっとマサキもメニュー見てるはず。

ほんの少し勇気をふりしぼって、マサキに視線を向けた。

マサキはくりんとした目で私を見ていた。

ま、まじで!なんでこっち見てるのよ!どうしてメニュー見てないの!

顔が一気に熱くなる。

ほらほら、やっぱ変になってるじゃん、私!

慌てて、メニューに視線を落とした。

「ユイカぁ。」

斜め前からマサキが私を呼んでる。

呼ぶなっての。

メニューから視線を逸らさないまま、

「何?」

と答えた。

「お前、俺のことまじで嫌ってんの?」

胸までかーっと熱くなってきた。

ほら、お兄ちゃんが余計なこと言うからぁ。

どうつなげばいいのよ。この続き!

兄の方をちらっと見ると、兄は素知らぬ顔をしながら口だけニヤニヤしている。

くそっ。ばかたれ!

「みんなもう何頼むか決まった?」

敢えて聞こえないふりして、マドカの方に顔を向けた。